『注目したい、お酒の抗酸化作用』

前回、“酒は百薬の長”というお話をしましたが、こんな効果もあります。

 

お酒の抗酸化作用といえば、「フレンチパラドックス」が有名です。

これは、フランス人がバターやチーズなどの乳製品や肉類を大量に消費するのにも関わらず、心臓病の死亡率が高いのは、赤ワインに含まれるポリフェノールという抗酸化作用のおかげだという説のことです。

1992年にフランスの科学者が提唱し、WHO(世界保健機関)が注目して世界中に広まりました。日本でも赤ワインブームが起き、白ワインの消費量を赤ワインが上回りました。

ポリフェノールに関しては、その後様々な研究が行われ、遺伝子や細胞を酸化させて傷つける体内の活性酸素(フリーラジカル)を抑える働き(抗酸化作用)があることが明らかになっています。活性酸素を抑えることで、血管の老化が抑制されると、動脈硬化予防などに効果を発揮します。

最近ではさらに、ポリフェノール中に含まれるレスベラトロールという物質に、動脈硬化やアルツハイマー、がんの予防効果があるということがわかってきています。

また、あまり知られていませんが、ポリフェノールはビールにも多く含まれています。

抗酸化物質は、日本酒にも含まれています。フェルラ酸と呼ばれるポリフェノールの一種で、抗酸化作用のほか、シミやそばかすの抑制効果が高いといわれています。

また、アミノ酸には肌をしっとりさせる効果、純米酒に含まれるフルーツ酸には、古くなった角質を除去してやわらかな肌を保持する効能が認められています。古来「日本酒の美肌効果」は知られていましたが、最近の研究で、少しずつその成分と効能が解明されてきています。

ウイスキーには、ポリフェノールの一種であるエラグ酸が含まれています。エラグ酸は、ウイスキーが樽の中で長期間熟成される間に樽のオーク材から浸出して生み出される成分で、糖尿病の合併症予防に効果があるのではないかと、期待されています。

このように、お酒に含まれる抗酸化物質や栄養成分についての研究が進むにつれて、動脈硬化、糖尿病の合併症、がんなどの予防効果が少しずつ解明されてきています。

いずれも、効果が得られるのは適量飲酒が前提ですが、お酒にはアルコールのJカーブ効果やストレス解消だけでなく、成分そのものにも体にいい秘密がまだまだ隠されているのではないかと期待しています。